モーツァルト 後期交響曲集 DG Japan SHM-CD


録音されて30年ほど経ってカラヤンの仕事の中でわたしはハイドンの方に軍配を上げるが、モーツァルトのほうが随分と聴かれたレコードだろうことは容易にイメージできる。アーティスティック、テクニカル・ポイント共に両者同質ですが、モーツァルトの方はサンモリッツで録音されたこともあって、リゾートの待合ロビーで聞こえてくると旅を楽しく演出するだろう。
9曲全体に前へ前へと進む音楽で、ポジティヴで陰りは全くない。モーツァルトの憂い感は全集のどこにも隠れていない。アンチ・カラヤンが定着させたと思われるカラヤンの演奏は早いというのを端的に感じられる。でも演奏時間を比べるとそれほど激速というわけではない。
同時期にベームがカラヤンと同じベルリンやウィーンのフィルハーモニーを使った演奏は音楽の縦のLINEが軍隊調なだけだ。
ワンポイントでピックアップするなら、40番のシンフォニーの第3楽章。
古楽器時代には管楽器は遅れて響いただろう。カラヤンの録音は残響を活かした音の厚みで、マーラーのシンフォニーでのバンタのようなたゆたい感を創りだす。
カラヤンの厳しい目が隅々に届いているのは少し鬱陶しく感じられるけど、この録音のあと古楽器演奏で聴くモーツァルト全集が示してくれる指針がここにある。
アナログレコードでどの組み合わせでリリースされたかは知らないけれども、全9曲を通して感じたことは一枚か二枚を聞いたぐらいならアンチ・カラヤンの言うことに素直に同意してしまうだろう。
DG UCCG9755-7 CD3枚組 SHM-CD